令和6年6月28日
大阪国際空港メディカルクリニック所長 東 孝次
劇症型溶血性レンサ球菌(以下溶連菌)感染症が最近増えていることがマスコミでも報道されています。日本国内での報告は、近年では年間600~900人であったのが、2023年に940人となり、2024年は6月2日までに977人になり、昨年の数を既に超えているとのことです。
この疾患は1987年に米国で最初に報告され、急激に進行し重症度が高いため、「人食いバクテリア」と呼ばれ、センセーショナルな話題となりました。それから30年以上経過したにも関わらず、画期的な治療法がなく致死率が約30%と高いため恐れられています。
溶連菌は上気道炎や化膿性皮膚感染症の原因になる、ありふれた細菌です。劇症型溶連菌は、強い毒素を発生するため病状が急激に進展し、四肢の壊死や多臓器障害を起こし重症化するのですが、何故ありふれた菌がそのようになるのかよく判っていません。また、何故日本国内で劇症型溶連菌感染症が増えているのかも判っていません。新型コロナ感染症流行後に呼吸器感染症が増えていることが影響しているのではないか、という説もあります。
以上のような状況であるため、恐れられることは理解できますが、例えば新型コロナ感染症などに比べると頻度が低く、過度に反応する必要はありません。また、例えば欧州内では国や地域によって劇症型溶連菌感染症の発生頻度は違っており、WHOは渡航制限を推奨していません。
対応としては、呼吸器感染者と接する場合にはマスクを着用し、外傷を受傷した場合には清潔を保つように努めるなどは有用です。そして、高熱や強い倦怠感がある場合には放置せず医療機関を受診してください。