最近マイコプラズマ肺炎の増加が話題になっています。新型コロナ感染症(COVID-19)が発生し流行した2020年以降、マイコプラズマ肺炎は著明に減少していました。その理由はマスク着用など感染対策が行われたためと推測され、世界中で同じような傾向を示したといわれています。ところが、COVID-19の重症者が減少し、我が国でも2023年に2類指定感染症から5類になり、感染対策が緩められることとなりました。その結果か、今年はマイコプラズマ肺炎(5類)患者の報告数が急激に増加しています。
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという細菌感染によって引き起こされます。患者の80%は14歳以下と言われていますが、成人でも少なくはなく、小児より重症化しやすい傾向があるようです。
症状は、発熱、だるさ、頭痛など一般的な「風邪症状」が最初に現れ、咳などの呼吸器症状は3~5日経ってから現れることが多いとされています。発熱は通常数日で改善し、空咳のみ1か月程度続くこともあるのが特徴です。
診断としては、一般採血検査やX線撮影、CT検査なども行いますが、マイコプラズマ感染を確認するためには咽頭粘液の細菌培養、血中の抗体や遺伝子検査が必要で、近年では喉や鼻の粘液の診断キットが広く用いられるようになっています。
治療としては、ペニシリン系は無効であり、マクロライド系などの抗菌薬で治療します。
感染経路としては飛沫感染と接触感染が考えられ、潜伏期間2~3週間と言われています。基本的には軽症が多いので感染に気付かず外出することもあり、「歩く肺炎」と呼称されています。新型コロナやインフルエンザなどに比べれば感染しやすいものではありません。流行時には人ごみを避け、マスク着用や流水、石鹸による手洗いなど、感染対策を行うことが有効とされます。
マイコプラズマ肺炎は1年を通じて発生があり秋冬に増加する傾向があります。今年は7月から急激に増加しており、今後さらに流行する可能性があり警戒が必要です。
令和6年10月2日
大阪国際空港メディカルクリニック所長
東 孝次
参考:大阪府内のマイコプラズマ肺炎の状況(大阪府感染症情報センターHP)